ヴァン・ゴッホ。
ヴァン・ゴッホ。
自分の唯一の関心は、
どうしたら社会の役に立つ身になれるだろうか。
何かの目的に適う人に、何か善い事の出来る人になれるだろうか。
どうしたらもっと稼いで、一定の課題を深く究める事が出来るだろうか。
それだけなのだ。
若き日の弟テオへの手紙
私は仕事に命を賭けている。
そして既に私の理性は、その中で半ば崩壊した。それはそれでよいのだ。
だが、君は、そこいらにいる商人どもの仲間ではない。
君はまだ人間らしく行動する方を選ぶ事が出来る、と私は思う。
そうではないか。
弟テオへの最後の手紙
人々は自分の私的な幸福の事ばかり考えて追求してはならない。
世界と人類全体の幸福のために役立つ仕事をして、広い人間性の中で活動しなければならない。
ヴァン・ゴッホ
アムステルダムのゴッホ美術館に陳列してあるゴッホの手紙を見て。
…ゴッホの手紙が展示されている。整然とした美しい筆跡である。字格の高さに感銘を受ける。
彼は正規の学校教育を受けなかったが、大変優れた知性人である。彼は熱心な読書家であり、彼の文章力は専門の文筆家に劣らぬものである。
孤独なゴッホは生涯を通して、絵を描くことと共に、日々の生活を、最愛の弟を始めとして親族や画友に書き送った。
手紙には、私的なつまらぬことは、一切書かれていない。自己欲や自己保身や利己心がない。誠実と献身と愛の強靭な精神が貫かれている。
ゴッホは世俗と折り合い、妥協するようなことをは決してやらない。信仰を裏切ることは断じてない。
ゴッホの魂は謙虚で雄々しく自然と神と人類と共にある。
ゴッホの手紙は近代の最も高い告白文学の一つである。