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歴史を蘇らせる想像力。心眼。

 私は西洋芸術を研究してきたが、卑屈な西洋一辺倒、崇拝をしてきたのではない。古来から日本は、自国の土着思想と、外国からの思想との間で闘わざるを得なかった。その結果、外国思想を取り入れて、我国独自の優れた文化、芸術をつくってきた。
 油絵やデッサンなどの、西洋美術の伝統を取り入れ、研究して、日本人の心を、力を、エネルギーを表現することが私の仕事です。日本の自然と人間を描くこと、祖国を愛し、造形することが、私のライフワークです。

 太古からの自然と、歴史的古典的風土の中に身を置いて、文化遺産を訪ね、芸術と学問の道に務め励むことが大切です。
 先ず自然の実在に即して自己を見出し、自己を知り、古来からの日本の文化の特質と根本をよく理解し、その上で現代において世界の文化を摂取することが、自己の芸術の仕事の深まりと広がりに役立つのです。
 アジアの島国の日本人は、古代エジプト、ギリシア、ヘヴライ、アラビヤ、ペルシャ、インド、シナ等の、アジア、ヨーロッパ、アフリカの大陸の文化の根源と、その交流の歴史を、広く深く研究しなければなりません。
 そうして太古から人類が創造して来た芸術の作品を、現地で視察し研究し、地球の大地に立つ力強い生命のある現代の芸術を創造することが肝要です。

 近視眼的にならず、人間の歴史を、過去と現在と未来が関聯したものとして見る、古典的で健全な文化を再建することに務めなければなりません。
 現代人の不幸は、精神の古典の地、故郷を失ったことにある。各人の幼少年時代は自分の過去であり、歴史です。人類の精神文化伝統は過去であり、歴史です。想像力とは、過去の歴史を現在にまざまざと蘇らせる人間の精神の力であり、精神の眼、心眼です。決して空想や懐古趣味ではありません。
 歴史を正しく学ぶこと、即ち温故知新。古いものの中に本当の新しさがあることを見出すことが大切です。

 歴史を学ばず、過去を葬り現在における未来の創造などと喚くのは、病的で軽薄で無価値なことです。

 「真実はいつも少数派である。…真実はいつか必ず実現する。未来は過去と現在の単なる延長ではなく、過去と現在の中には、これまでに顕在化されていない可能性がふくまれている。」   
              湯川秀樹

 

 
 
 
 
 
   

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