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[来賓挨拶] 水谷幸正

宗教的真理と芸術的真理は一体になっている 佛の衆生済度の大慈悲への信仰が遠藤剛熈の六十年の画業の根本と中心にある
愚直に一筆に力をこめて 無器用な誠実をもって自分に出来る限りのことをする これは芸術と宗教が一つになった境地である
宗教と道徳と芸術が一つになった人間教育 情操教育の必要性に全く共感する 画家の志を真摯に受けとめそれが社会に実現することを切に念じる

水 谷 幸 正(佛教教育学園理事長)

 

 遠藤剛熈美術館開館10周年おめでとうございます。
 私は遠藤剛熈美術館へ作品を鑑賞に訪れたのは今回で3回目でございます。初めて鑑賞したときから、多数の作品から感じ取られる力強さ、重厚さ、精神の深さに心打たれました。これは立派な画家の方だと思いました。黒と白で描かれた近年の作品は東洋画と西洋画を融合した独特の現代の表現だと思います。ただ、私は宗教者ではありますけども芸術家の方々の心を心としてるつもりではおりますけども、でもやはり、まだまだ宗教者として未熟ですから、芸術家の素晴らしい芸術作品を充分に鑑賞する能力に欠けていることを誠に恥ずかしく反省しているところでございます。
 京都に生まれ育った遠藤さんは、京都の風景を長年描き続けてこられました。重厚な油絵、力強く剛直なタッチのデッサンの作品の他に、優美で軽やかで調和がある絵があり、その美しい色彩に感嘆いたしておりました。近年の遠藤さんの仕事は、空間の広がりがあり、自然が持つ峻厳と優美の両方を総合する境地に入っていらっしゃるように見受けられます。
 私は社会での現実の多忙な日々の中、遠藤さんの美術館に来ますと心の安らぎを覚えるわけでございます。今日も大いに安らぎを心一杯ふくらませて帰らせていただきます。
 しかも遠藤さんは実のところ申しますと、30代に佛教大学文学部佛教学科に入学され、佛教史学を専攻して卒業していらっしゃいます。恵谷隆戒、伊藤真徹、藤原了然、坪井俊映等々の明治・大正生まれの今はすでに亡き方々でございますけども、この真実一路の真心からの授業を受けたことを今も大切に心にとどめていらっしゃるのでございます。そうして、深い感謝と恩義の心を強く強く持っておられる方と、私は存じ上げております。
遠藤さんにとっては宗教的真理と芸術的真理は一体となっております。御仏の衆生済度の大慈悲への信仰が遠藤さんの60年の画業の根本と中心にあるのではないでしょうか。
遠藤さんは現代の芸術教育は技術優先で心がない、このような時代に、物より心、心の教育、人間教育、情操教育を復興するためには、宗教と道徳と芸術が一つになった芸術作品の創作とそのための教育の必要性を常々力説していらっしゃいます。私は全く同感でございます。今回のこの開館10周年記念遠藤剛熈展制作者の言葉として、「世界中が本当のデッサン」、「デッサンは根本、基礎」とこのように説明なさっておりますが、「デッサンをやらなくなったが、私はたえずデッサンをする。愚直に一筆に力を込めて、不器用な誠実さをもって、自分にできる限りのことをする」云々と述べていらっしゃいます。これは芸術と宗教の一つになった境地だと、私は受け止めさせていただいております。
 佛教大学卒業生の遠藤さんは、絵画作品と美術館を人間教育に役立てたいと熱弁して、熱望していらっしゃいます。私としては遠藤さんのこの志を貴重なものと真摯に受けとめ、それが実現することを切に念じて、お祝いの言葉にかえさせていただきます。

               (佛教教育学園理事長)

 
 

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