© 2012 Gohki Endo All rights reserved.

開会式スピーチ 富山秀男

富山秀男 氏
ブリヂストン美術館館長、美術史家

 

遠藤剛熈美術館開館記念
開会式 スピーチ

富山 秀男

 富山でございます。もう二方、実に聴いていて、全く同感だと思うような遠藤さんの仕事に対する批判、批評、こういうものをうかがいまして、この上私が何申すこともございませんので、別の角度から 。
 遠藤さんが、まあ今日もうかがったところによりますと、構想を立ててから十五年かかったと、この美術館の開館 。私は京都にいたことがありまして、三年程前にこちらにお邪魔したことがあるんですけれども、この建物の下の一階が部屋としては出来ておりまして、そこにもう油絵、重厚な油絵、力強いデッサンというのが何重にも額縁ごと立て掛けてある状態 。「日本の女」のこの凄い、迫力満点の素描を拝見したりなんかして、粟津さんと同じような思いを味わい、お向かいが一応、一階二階と出来ておりまして、そこにも作品が展示してございました。それを見た思い出がまざまざとあるわけでございますけれども。
 その時以来、これをいずれ個人美術館として開館するので、開館記念日にはぜひ出席してくれというようなお話がありまして。昨年はまたさっきの奈良そごうの展覧会画集を送っていただいたりいたしまして。遠藤さんとはそんなに頻繁ではございませんけれども、思い出にもう絶対に残ってしまって今日も掛け参じたわけでして 。この今日のお集まりの中にはもっともっと私なんかよりもお近しい長年のご友人がいらっしゃるに違いありませんのに、ご指名でこんな拙いことを申すんでございますけれども 。
 遠藤剛熈という人は名前と同じようにもう純粋無垢と言いますか、よくぞあれだけ清純で情熱的で、自分の仕事をまあ追求し抜くという人生が可能であったと、感心するぐらいな作家でございます。今うかがいますと1500点もの作品を残したと。絵を売らずにこんな美術館が建てられるというのが、逆の方のそのバックというか背景が私にはちょっと想像が出来ないほど幸運が羨ましい方、そういう一面もあるかと思いますけれども、しかしそれを上回って、情熱というものの凄さ、これに感じ入っている次第でございます。その画集の最初のページに、遠藤さんが美術館をこの設立するにあたってのいろいろな思いを文章化しております。それを何度も推敲に推敲を重ねたものが印刷されておりましたけれども、その中に、作品というものは自分の生き様であって自分の心の告白であると、それを多くの人に知ってもらい見てもらいたい、というような意味の一文がございました。もう長い長い文章でござましたけれども。
 個人の力、独力でこんな立派な美術館をお建てになったということは、今、美術館というものはいろいろ経営その他難しい時期でございますけれども、しかしやはり日本の文化の高さというものを示すには頑張らなきゃいけない。そういう厳しい時期の船出でございますので、ぜひ今日お集まりの皆様がこの感動を持ち帰られてお知り合いにご吹聴になり、こういう凄い画家が京都で個人美術館をおつくりになったということを紹介していただいて、この遠藤さんの志というものが多くの人に伝わりますように、お祝いと同時にお願いをいたしまして、私の拙い祝辞にさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

     (2000年11月23日 遠藤剛熈美術館にて収録)

 
 
 
 
 
 

Leave A Reply

You must be logged in to post a comment.