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アルベルト・アインシュタイン。


    アルベルト・アインシュタイン。


              

 前略
 …真・善・美それが私の理想であって、それは常に私の前途を照らし、生活の喜びで私を満たしてくれた。安楽とか幸福とかを人生の目的にしようとは考えたこともない。之を基礎にして構成されるような倫理の体系が妥当するのは牛馬の群のみであろう。
芸術や科学の研究において、同好の仲間と協力して永遠に到達し難いものを追求して行くという気持ちがなかったなら、私の生活は空虚なものであったろう。私は子供の時から、人間の野心によって屢々固定されるありふれた限界を軽蔑して来た。財産、外面的な成功、世評、ぜい沢――そういったものは常にいやしむべきもののように思われた。私は簡素な謙遜な生活こそすべての人にとって最上のもの――心身いずれの為にも最上のものと信ずるのである。
 中略
 …我々のあわただしい生活において、真に価値のあるものは国家ではなくして、創造的、感受的な個性であるといえよう。即ち一般の大衆が理想を失い、無感覚となった中にあって、貴く崇高なものをつくり出す個性――之が最も価値あるものである。
 中略
 我々の経験し得る中で最も美しいものは神秘である。之こそあらゆる芸術、あらゆる科学の源である。この感情を理解出来ない人、畏敬の念にうたれ、驚異に恍惚として陶酔することの出来ない人は死者も同様である。彼の目はふし穴である。この生命の神秘の洞察は、畏怖の念と結びついて宗教を生ぜしめる。我々の測り知られぬ物が事実存在し、それが我々の幼稚な能力を以てしてはほんの一部しか理解できない様な最高の叡智、最も輝く美として我々の前に現れるのを知ること――この感情こそ真の宗教の核心をなすものである。この意味において、そうしてこの意味のみにおいて私は真摯な宗教家に属するのである。
 中略
 私には、永遠に続く生命の神秘を凝視し、僅かに知覚し得る宇宙の驚嘆すべき構造を沈思し、自然に現出する真理の微小な部分だけでも理解しようと及ばぬ乍らも努力することだけで充分である。

 
 
 
 
 
 

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